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そして。
ヤマトでの、4度目の戦いを生き延び——。
「…真実を追い求めるのが…無意味なことも、あるよな」
暗黒星団帝星からの帰途、島は古代にそう呟いた。
やっと共に生きられると信じたはずの兄、守。そして、姪のサーシャすらも失い…。親友はいつになく打ちひしがれていた。
非番に入り、お互い眠れずにうろついていて…展望台でばったり出くわしたのだった。
サーシャは、なぜ…残ったんだろう。何を考えて、あんな事をしたんだろう?
俺が…救われて苦しまないと、思ったんだろうか。
古代が島に言うともなしに呟いたその問いは、自分がテレサに向かって幾度も思い、そして答えが得られぬままになっているものとまるで同じだった。いや、答えなら出ている。彼女たちは、最善を尽くした……割り切れないのはただ、俺たち自身の気持ちなのだ。
「なんでなんだ、サーシャ…」と言葉を絞り出した古代の肩に、やおら島は片腕を回した……向き合って話せる内容ではなかったから。
「お前…しばらく前、俺になんて言ったか…憶えているか?」
涙目の古代が、え、といって顔を上げた。島は古代の顔など見ず、遠く後方にけぶる外宇宙を眺める。
“それでもお前に、生きて欲しかったんだよ…彼女は。
だからこそ。過去にとらわれるのではなく、明日へ。
前に向かって進むしか、ないじゃないか……島。俺も、お前も“
お前は俺に…そう言ったんだぜ、古代。
「…生きような、古代」
島のひと言に、…古代は頷いた。
生きような、テレサの分まで。サーシャの分まで、そして…お前の兄貴とスターシアさんの分まで。雪だって、待っててくれてるんだぜ…
肩を組んだ二人は、黙ったまま展望台の外に広がる、黒い宇宙を眺め続けた。
真実を追い求めるのが、無意味なこともある。
やっと手に入れた真実が、最も痛々しいものである場合も、少なくない…。 真実を知りたいという欲求は誰にもあるが、知らないでいることにもまた…意味があるのだ。
——大事なのは、俺が、彼女を愛しているかどうか、だ。愛されていたかどうかじゃないさ。……そんな答えじゃ、君は不服かもしれんがな。
そう言った古代守を思い出し。
島は、微かに笑った。
<了>
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