奇跡の欠片 <あとがき> 

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<あとがき、という名の「言い訳」w>



 俺が抜けたって、いくらでも代わりはいる——
 <アルゴノーツ>AIでは出せない奇跡の操縦データを常に更新して行かなければ、自分の存在は本当にただの歯車に成り下がる。「焦り」というよりも、「寂しい」と、…島はそう感じた。(本文より)

 
↑これ…。
 実は、書いちゃ駄目だ、とずっと思っていたことなんです……
 ERIのラノベでは『分かっていたけど書かないでいたこと』だった。

 



「2」の終盤、それから「完結編」の序盤と終盤。ヤマトは島がいなくても、立派に戦ってます。「2」では島ですら困難だろうと思われる、「白色彗星帝国都市が海面から飛び立つその後を追っての、海中からのテイク・オフ」。「完結編」では自動操縦によるパーフェクトな帰還、そして島没後の古代のワープ、等々…。

 そもそも、「2」では島が被弾して行方不明になった後に<決戦>してます。最初、穏やかな海面から飛び立つのにすら「島がいてくれたら」なんて思っていた古代なのに(それは「さらば」での台詞・w)、島が重要だったのは序盤までで、どういうわけか「2」の終盤では島無しでも決戦に挑もうとみんなが思えるほど、ヤマトの操縦系統には何かアンビリバボーな工夫が施されたようです…(くそ)。

 まあ、そこには多分に、制作サイドのご都合主義がミエミエなので、ある程度は諦めてるんですけれども…。



 実際、あの「2」25話のテイクオフにしたって、ヤマトがカッコ良く見えるようにとそれだけを考えて描かれた離陸シーンです… 島が操縦していないってことを脚本が忘れていたか、またはそんなことどうでも良かったか…?ファンから見たら、かなりお粗末な不整合なのですが、ヤル気がないのかバカにしてるのか(ヘッ、どうせ主人公じゃねーよ、ワッキーだよとグレてみても、なんチャラの遠吠え)。
 
 ともかく、あのシーンの存在のおかげで、ERIは本放送を見た中2の時すでに、「ああヤマトって島がいなくたってちゃんと戦えるんだな……ヘッ…」とかなり脱力したんですよ。



 そこへ来て、「完結編」であの操縦席での死に様。

 おかしいじゃないか、島があそこに無理矢理いなくたって、ヤマトはちゃんと戦えるのになんで彼があの席で死ななくちゃならないんだ。島が喚こうが暴れようが、彼を医務室へ放り込んで欲しかった、若かりし頃の私はそう思いました。島がどう思ってあの席にこだわったのかということより、ただ自分が彼に死んで欲しくなかった、そっちが大事だったからです。

 ただ、もうちょっと大人になって、男の意地だとかプライドだとか任侠だとか(+制作の都合だとか ←イヤミ)、そんなことに感性豊かになってくると、段々分かってきたんですね。

「島は、自分が操縦しなくてもヤマトが充分戦えることを知っていた。それなのにあの席に死ぬまで固執したわけは、なんだったのか」ということが。


 一つには、それが彼の「意地」だったんじゃないか、てことです。

 島の立場は、男としてはかなり微妙です。
 同期の古代はとっとと艦長代理、艦長、とステップアップして行く。自分が惚れてた女をモノにする。どう見たって、総合的には自分の方が優秀なのに、自分の欲した物はすべて古代が簡単にさらって行き、しかも直属の上司として自分に命令を下している。

 方や自分の惚れた女は自分の知らない所で地球を守って死んで行き、「彼女がお前に惚れたから地球も救われた」などと、見当違いの感謝(もしくはそういう妙な気の遣い方)なんかされ。島にしてみりゃ、自分の能力で勝ち取ったものなんか一つもないのに。

 それでも島は、古代に対して「親友」というスタンスを崩さず、最後まで寛容です。自分の方が古代より器がでかいという自己暗示でもかけているのか、妬みも嫉みも僻みもしない。なんて出来た男なの、とは思いますが… 時々苦しそうですよね。ヤマトlllではその片鱗がうかがえます。


 じゃあ、「完結編」の時点での島にとってのプライド……自尊心、ステイタスって何なのか。

 極端に言っちゃえば、「操縦と運行はあいつに任せておけば間違いない」という皆からの信頼、それだけではないですか。

 それを「必要ない」と言われてしまったら、彼の立場は、彼の感情は、どうなりますか……? 



 負傷した島を、島自身が拒否ろうが暴れようが医務室へ放り込んで戦線離脱させてしまうというのは、彼に「お前は必要ない」と宣告するようなものです…。だからそれは、彼にとってあの席で死ぬより残酷なことだと、ERIは思うようになりました。命が助かっても、怪我の手当てを理由に今ここを離れたら、魂が死んでしまう…と島は思ったのかもしれない、と。
 だから、彼が自分のプライドをかけてあの席で死んで行った、そのことについてケチを付ける気は、今になれば無い、…と言えます。

 まあ、………
 それすらも、制作のお粗末な不整合をなんとか、本編の物語にすり合せて理解してみようという、無駄な抵抗…じゃなかった、無駄な努力でしかないわけですが。

 結論としては、「島はただ、お涙頂戴の下手な芝居をさせられただけ」です。下手な原案と脚本に殺されただけ。主人公じゃないから、熟考されることもなく安直に殺されただけです。
 でも、そうは思いたくないんで(そう思っちゃったら腹が立ってしょうがなくなって、ヤマトなんか見たくなくなりますからね)、じゃあ、島大介がそんなに好きなら、彼の心情はどうだったのか、彼の気持ちになって考えたらどうだと、そっちへ考えをシフトした、ってわけです。



 もちろん、彼があの席にこだわったのには、それだけじゃなくて色々複合的な理由があったろうとも思います。
 上に書いたようなプライドもあったでしょうし、ここのConsiderに書いたみたいに、「玉砕する」ことに誇りを感じてたからじゃないか……っていう理由もあります。それと、最近書き散らしているように、テレサのときと同じように戦線離脱してしまったら、また自分は蚊帳の外におかれる、という危惧も、あったでしょう。

 それから。
 本文でユキに語らせていますが、同じヒューマノイドと戦う時の、異常な心理状態に耐えられなくなって行った、それもあったのじゃないか…とも思えます。
 今回描いた、ユキの島についての感情は、かなり彼に対して好意的です。
 ユキの言っていたのは、別に宇宙人との戦いでなくても人類が古来から抱えてきた葛藤であって、「戦争とは違う種類の正義のぶつかり合い」だという、アレ
ですよね。

 



 ………というわけで。
 ERIとしては「本編での島の死に、もはや異論はございません」です。

 が!
 自サイトでは、救命してしまいます。

 だって、本編の島の死に方では、あまりにも彼が… 幸薄くて気の毒なんだもの〜〜〜(泣)。まあこれも、島にとってみれば「余計なお世話」でしょうね。カッコ良く死なせといてくれないかな、って彼自身は絶対思うことでしょう。

 結局、目覚めて見たらやっぱりヤマトは自分無しで戦って勝利したわけだし、じゃあ今後自分はヤマトには要らないだろ、と拗ねたくもなるでしょう…
 雪には小っ恥ずかしい告白しちゃったし、この期に及んでやっぱし生きてましただなんて、それ以上カッコ悪い事ないですよ。そこへ持ってきて、きっと古代はうるさく「ガンバレガンバレ」ってベソかいてつきまとうだろうし(w)、下手したら、またもや自分に遠慮して雪と結婚しないでいるかもしれないじゃありませんか。

 だから、「完結編」後に島を救命するのって、コアな島ファンとしてはかなり、冒険だったんですよ。「ERIさん嫌いだ」って島に思われる、それを覚悟しての決断です……これもConsiderに書いたと思いますが。


 そんなこんなで、「完結編」後に目覚めた彼は、なんと失語症になっちゃったわけです。ごめん〜〜〜!!ごめんなさい〜〜〜!!!



 でも、ここで先日来勉強してみていた医学的なあれこれがちょっとベースに入ってきます。

 同一人物からの大量輸血は、臓器移植も同様。
 だから、テレサが島の身体の中に生きているというのは(記憶がある、とか、声が聞こえる、とか、何かインスピレーション感じちゃう、とか言うのはあまりに感傷的なのでウチではやめましたが)そういうのもアリだな、と。そう改めて思った。
 ただ、柴田昌弘の漫画(赤い牙/ブルー・ソネットあたり・w)じゃないけど輸血でESPが島の身体にも…というのは避けよう、と(w)。まあ、単純にそれやると、ヤマトじゃなくなっちゃいますから。

 で、テレサの能力、の欠片がひょんなことで発動した……と、そういう展開に持って行ったわけでした。……それが今回のお話。


 聞き手はオリキャラです。彼女の性格付けもちょっと特殊で、飄々としてますね。「ただ聴くだけ」。
 実はこれ、正統派「傾聴の手法」。良いカウンセラーはこの方法に優れています。「言いっぱなし」「聴きっぱなし」というのは、精神的ダメージを受けた人にとっての自己ヒーリングの有効な手段としても、現実に存在します。

 苦しんでいる人の話の聴き方は、「聴くだけ」がベスト。「どうして?」「次はこうすればいい」「どうしてこうしなかったの」などは一切NGと言われます。
 次に必要なのが「肯定」です。あなたは間違っていない、あなたの話を信じる、私を信じて話してくれてありがとう。その3つだけで、信頼関係を築けます。

 島には、恋人とかそんなものより、そういう「良い聞き手」がいてくれたら良いかもな……と思って出てきてもらったオリキャラです。え?あの後付き合うのかって? お望みでしたらそれでもいいですよ? 妄想は自由です……w





 さて、おかげで島はカッコ悪い姿をさらしつつ、再び宇宙戦士として復帰することになります。めでたいんだかめでたくないんだか、今イチ…良く分かんないよな(苦笑)。

 




※ そう言えば、今回ふと思いついて書いたくだりですが…

 ヤマトの主題歌にある、
「誰かがこれをやらねばならぬ、期待の人が俺たちならば」

 あれ、カッコイイ歌詞ですけど、自分や自分の家族、夫、息子、父親などがその立場で、生還は望めないような戦いに出るのだとしたらどうですか。……精神的に本人も、待っている銃後の人間にとっても、キツイですよね。

 ヤマトの場合、勝って帰るということはイコール生者と死者双方の遺志を継いで再び戦いに出るということ。
 そう考えたら、古代もユキも島も真田さんも、みんなとっても可哀想。二度と戦わなくても良い世界に行けたら、どんなに良いでしょう…。


 ERIは……
 というより、テレサは……きっと、そう思うんじゃないでしょうか。

 ……ね。
 島に、カッコイイ戦士であってくれと願いながら、反面、心境はテレサ的になっちゃうんですよねえ。
 彼らが宇宙戦士でなくなっちゃったら、ヤマトじゃなくなるって。


 でも、「完結編」後に助かって、テレサと再会した我がサイトの島は、ホント〜に退役してますけどね…(w)

 


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