感想文(8)

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<アマールへ…>

 さて…その前に、地球からアマールまでの距離、ですが。
 アマールまでは、2万7千光年、と言われていました。で、見ている限り…ワープ2回程度で行ける距離なんですよね。19年前、テレザートまでの2万光年を、ヤマトは随分時間かけて行っていたような気がします。少なくとも2回じゃ行けなかったね。スーパーチャージャーが付いてから、随分長距離を一度に進めるようになったようですが…。ああ、世界は変わったなあ、なんてそんなことにも妙に感心したロートルERIでございました。

 ヤマトと移民船団が着陸したのは、アマール本星。王都に面した湾内に設えられたエアポートに、次々着陸する巨大な移民船…

「ヤマトだ…!!」
 陽光を受けて降下して来る、伝説の守護神たるあの船のシルエットが、先住していた連邦市民たちの目を引きます。アマール女王の好意により家屋を与えられ、そこにひしめき合って生活を始めていたらしい地球人たちが数グループ…。



<ERIのハテナ?>
 ねえねえ。
 この人たちは、なに?

 試写会でも『ハテナ?』だったのであちこちにアクセスして意見を聞いてみたんだけど、解らんかったのだ。
「第一次・第二次は『全滅』じゃなかったの?」……けど、よくよく見て行くと生き残りがいた、って言う流れになっている。ここも、この前後がなんかカットされているんですね……。
 古代が上陸して、最初に会ったのは「第一次船団の生き残りの士官」。

「きみが生存者をまとめてくれているのか」
「ハイ…本来でしたらこれは古代団長の役目でした…」
 第一次船団団長、古代雪は、行方不明——。


 戦況が激しくて、我々もワープして脱出するのが精一杯でした。古代団長の船は、この星域に無人でワープアウトしてきたのが発見されたんです……


 アマール側の提供してくれたと思しき戦艦ドックに係留された、もはや「残骸」としか表現できそうもない一隻の戦艦…。
「……遺体も、見つからなかった、と」
「ええ」
 …わかった。諦めずに探すよ。
 手渡された制帽。ぼろぼろにほころびたその鍔の裏には「古代雪」の名が。


 ここ。 かつての古代進なら。
 雪の帽子を握りしめ、それに顔を埋めて、「ゆきぃーーーーっ!!!」って号泣……するんじゃないですか?しない? で、真田さん辺りに慰められ、「遺体も見つかっていないんだ、気を落すな」とか言われて涙を拭いて〜、「よし、諦めないぞ」。といった流れになりそう。
 感情の起伏が小さくなった…、それは彼が成長しているからなのでしょうか。…ERIにはちょっと淡白になったような感じがしたぞ。38って、そんなに無感動かい??40過ぎるとまた泣くようになるのかもな(爆)。
 でも実際は、古代は<ゆき>で地球へ帰還する途上で真田さんから第一次船団の話を聞いているんでしょう。上条も古代雪団長について知っていることがあっただろうし。その上もしかしたら、大村さん辺りが、陰でめそめそしてた古代船長を見ているかもしれません……古代の、本編での落ち着きようは、きっとその部分がカットされているからなんだ、と思いたい。

 



 新ヤマトのファーストブリッジクルーたちも、思い思いに与えられた場所で故郷・地球への思いを噛み締めていました……
 夕陽を受けて、アマールの海へ沈もうとしているのは巨大な衛星…『月』。施設のバルコニーからそれを眺める3人組、真帆、上条、桜井。

「……アマールの人たちも、あの月を「地球」って呼ぶようになるのかな…」
 桜井の言葉に、無言でその『月』を見つめる真帆の目には涙が。くすん。ゴメンなさい…
「仕方ないよ、受け入れろ、って言われても…そんなすぐには受け入れられないよね…」慌てる桜井(真帆を泣かしたのはキミじゃないでしょ)。
 ただ、上条だけは。その射るような視線を『月』に注いだまま……
「…受け入れるしかない。その覚悟がなければ…、俺たちはただ地球から逃げただけだ」
 桜井も真帆も、上条のその横顔を見つめ。
 解ってる。上条がそう言う気持ちも。
 そして、自分たちがそうするしかないってことも………。

 ここには、なぜかコバはいませんでしたが、きっとその頃彼も、美晴姐さんかなんかと一緒にあの『月』を見て複雑な心境になっていたんでしょうかねえ。



 一方、第三次船団の到着報告を今か今かと待ち受けていたらしい地球では。

<地球標準時間、西暦2220年4月15日14時10分。移民船6300、護衛艦162、無事アマールへ到着。これより護衛艦隊旗艦ヤマトは移民船6隻を率いて地球へ帰還する予定>
 大画面に投影される古代進艦隊司令の勇姿。アマールからはるばる宇宙を超えて届いたその報告通信に、地球連邦科学局では大喝采が巻き起こってます。
「やりましたね!さすが古代さん…!!」
 次郎の嬉しそうな顔に、真田長官も笑顔で頷きますが……。




<娘と父>


 佐渡フィールドパーク内の『佐渡動物病院』では、古代艦隊司令の快挙に湧く大人たちを後目に、美雪が複雑な表情です。

「ああ、だめだめ。あんたの足は、まだ治ってません〜」
 ちょこまか動こうとする子ライオンを抱き上げ、その丸い頭を撫でる美雪。
「美雪ちゃん、お父さんの率いた第三次船団がアマールへ着いたそうじゃ」
 嬉しそうな佐渡先生。
 室内に差し込む夕陽が、斜めに美雪の頬を照らします…
「…こういう時は、素直に喜ぶもんじゃぞ?」
 そう言われたって、…な美雪です。「父には、…ヤマトがありますから」


 水を得た魚?あの船と一緒のときが、一番…嬉しいんだよね、お父さんは。あの氷の海に眠っていたときでさえ、お父さんを虜にしていたヤマト。それが甦ったのだもの……いよいよ、私も、お母さんも。敵わないよね…。


「…古代と雪は、今までどれだけの人々を救って来たと思っちょるんじゃ」
 佐渡先生は一生懸命古代の弁護をしてみますが。
「……お父さん。…お母さん一人、助けられないのに…」
 この子のミルクの時間ですから。
 子ライオンを抱いたまま、くるりと背を向けて。美雪は隣室へ消えます……頭を抱える佐渡先生と、アナライザー。
「若いコは、難しいのう」
「ハイ、デス…」

 美雪ちゃんも、大概ファザコンだよね。しかも、沖田さんに逆恨みをぶつけてた18歳の頃のおとーさんと、同じよーなことを言ってません?(似た者父娘・w)。

 何かに一生懸命な男っていうのは輝いてる。
 そこに惚れる女は数知れず。
 ところが、えてしてそういう男は家庭人としては失格であることが多く、妻や子どもはしばしば泣かされるはめに…。でも、ヤマトのメインキャラ、ほぼ全員がそのクチではないだろうかとERIは密かに思っているわけでして。真田さんも島も然り。相原も南部も太田も山崎さんも太助も、加藤も同じアナのナントカ。新キャラもそんな気がするし…。
 ただ、今回やっと大人の仲間入りした次郎(w)の場合はそうでもないのかな、と。彼はきっと、安全パイよ。夢追っかけて行かなさそう。なんか若いうちから酸いも甘いも知り尽くしてる感が……(なんでだ)ああつくづく、不憫なコ(爆)。

 


<佐渡フィールドパーク>


 さて、それは横に置いとくとして…
 ここで、ちょっと気になったことがあります。
 佐渡先生が、最後に地球へ残るという選択をしたことと、このフィールドパークとの関係です。



 動物って、移民計画上はどうなるんでしょう??次郎が立案した人類移住計画には、動植物の種の保存ももちろん含まれていたと考えていますが、「すべての個体を連れて行くことはできない」ですよね。
 オリストで補完してみましたが(Episode Jiro/復活篇へのプロロ—グ第4章(5))佐渡フィールドパークはただの動物園ではなく、DNAレベルから動物を甦らせるある種の研究施設でもあったんではないか、と。
 美雪の抱いてた子ライオンは、復活させられたライオンの産んだ希少な子ども、なのではないか。

 今回、全編に流れている「手塚ワールドっぽい生命の讃歌」とでもいう感じのナニカが、ここにも。

 佐渡先生としては、17年間に一生懸命復活させた動物たちを置いて行くのは本意ではない……だから、残る選択をした。美雪ちゃんもきっと同じ気持ちだったのかもしれません。別に、おとーさんに反発していただけではなく。ブラックホールに飲み込まれる運命にあるとは言え、どんなに小さな動物たちにだって、生きる権利がある。見捨てて行くという人間のエゴ、美雪ちゃんは受け入れられなかったのかも。

 真田さんや次郎だって、「地球を見捨てる」ことを受け入れたわけではなかったでしょう…苦渋の選択、だっただろうと思いますよ。最後に真田さんも佐渡先生とは別に「地球に残る」選択をしています。あれだけ懸命に計画し、進めて来た移民計画。その完遂には自分…真田さん自身が生き延びること、は入っていなかったんですから。
「科学者として最後まで見届けたい」
 そう言った真田さんの真意は、何だったのか。
 責任と、愛着?
 科学をねじ伏せ、従え、征服することを望んで生きて来た真田さんですが、科学なんぞというちっぽけな手綱では御しきれない偉大な生命体、それが地球です。真田さんの科学は、辛うじて今までその地球を守ることに貢献して来ました。なのに、今回はついに歯が立たず、地球を「見捨てる」ために科学を駆使することになったわけです。

 悔しかったでしょうねえ。
 計画の最初から、地球を見捨てる事を念頭に動いて来たんですよ…、あの真田さんが。

 加えて次郎にも、真田さんにとってそれ……つまり「見捨てる」計画が不本意だということが、きっと解っていたのでしょう。だからこそ、「立案者」「本部長」という肩書きを、覚悟を持って「彼が」自ら背負ったんじゃないでしょうか…?
 そして、真田さんは守れなかった地球に対する謝罪と愛着のために残り。次郎はその無念を背負って、…つまり真田さんの科学と意志を引き継ぐために、ヤマトに乗りました。


 次郎は兄貴の跡を継いだのではなく、真田さんの後を継ぐつもりだったのかもしれませんね……。

 

 

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女王イリヤの野望>へつづく…