感想文(13)

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(13)


<佐渡先生、行かないんですか?!>


 アマールから地球へは、ワープで約2回。一体どのくらいの時間で進むんでしょうか、島のいた頃の感覚しか分からないので何とも言えないんですが……


 
 ——ヤマト、通常宇宙空間へワープアウト。

 ただ、その空間には今も速度を落とさず地球へ向けて突進する移動性ブラックホールの触手が。
 不気味な渦の尾を引きながら、ヤマトに並走する異常な重力点……

「……移動性ブラックホール…これが」
「それ」は第一艦橋からも目視可能な距離に。おそらく引き込まれないよう充分な距離を取っているはずですが、その驚異に全員が絶句。
 桜井が胸の動悸を堪えつつECIの真帆にその正確な位置と規模、そしてスピードを算出するよう求めます。

<上下幅304,000キロ、左右に338,000キロ……ブラックホールの開口部は地球本星の約倍の大きさです。現在位置は銀河緯度8時30分、銀河経度5時12分、14時05分の方向へ毎秒29,000キロで移動中…!」


「急ごう、次のワープだ!!」

 地球へこれが到達するまでに、あと3日。

 



 激しい降雨と暗い空。科学局内部では、最後の奮闘が繰り広げられています……
「冥王星が飲み込まれました…!!」
 観測官の報告に、蒼白な顔色の次郎、そして真田さん……
「……画像処理して、スローで再生します」
 次郎くん、苦渋の面持ちで届けられた画像を再生。飲み込まれ、砕けて行く冥王星………あと3日。これが、3日後の地球の運命……

 この頃、すでに最後の移民船はすべてメンテナンスを終え、最終人員の搭乗を急いでいたのだと推測されます。まさに時間との闘いです。



 ヤマトはドンパチやってればいいでしょうが、やっぱり大変だったのは次郎と真田さんだったよねえ。ちょっとの予定の遅れが命取りになりかねないんですから。ヤマトが戻るまでに、残っている人たちの収容を終え、地球から充分な距離を取っていなくちゃならないんです。もうこの頃になって残っているような人と言うのは、スタッフ関係者が多いだろうから、何かグズグズするようなことってのは無いかもしれませんが、さすがに色々と悪天候だったり(いや…でも、晴れ晴れしている地域もありましたね。科学局の周辺、日本の関東地方辺りは土砂降りでしたが…)移民船だってそう素早くは出航できない事情もあったりなんかして、やっぱ大変だったでしょう。6隻、たって1隻に10万人乗るわけだからね、搭乗だけで12時間かかってもおかしくないよね……

 ガンバレ、次郎!あとちょっとだ!!




<ERIのハテナ?>
 あー、ええと。
 地球防衛軍本部、…ってのは、どこいっちゃったんでしょうか。とっととみんな退避しちゃったんでしょうかね。今回は最後の方になっても連邦政府関係者、軍最高司令官、…あたりがまったく登場しなかったんですが……。なんなの、みんな科学局に押し付けて逃げた? ぐはー…、そうだとしたら、マジで真田さんと次郎って、すごいポジションに居るんじゃないですか???(ORただのビンボウクジ??)


<佐渡先生が残った理由>

 真っ暗な空に、しのつく雨。
 施設敷地内に着陸した、救命艇に乗り込む施設員たち……
 美雪は彼らを誘導していましたが、佐渡の姿が無いことに気付き、雨の中を戻ります。

 そこは、佐渡フィールド・パークの管理施設の一室。

 「佐渡先生!!迎えの救命艇が来ました!」
 クラシックな引き戸状のドアを勢いよく開け、美雪が顔を出します。吹き込む雨に、佐渡先生はゆっくり振り向き……
「…わしゃあ行かんよ」
「先生…!」

 畳が持ち込まれた佐渡先生の大四畳半風の自室には、小さな箪笥、丸いちゃぶ台、そしてちゃぶ台の上には肴と日本酒の一升瓶「唯我独尊」がどんと置かれ。ミーくんを相手に、佐渡先生は相変わらずまったりと冷や酒片手に、胡座をかいています……
 あの肴は何だったんでしょうねえ。魚・カマボコ系、に見えたんですが…あんまり美味しそうじゃなかったなあ…。この期に及んで、美味しいもんをどっさり食べたいとか言わないところが佐渡先生、大人だなあ、とERIは思ったよ……。



「あたしも……残ります」
「美雪ちゃん」
 佐渡先生は優しい目をしてゆっくりとかぶりを振りました。
「…お前さんまでいなくなったら、古代は独りぼっちじゃ。古代は、愛する人が待っているからこそ戦った。ヤマトの旅はいつも、待っている者のためにあったんじゃよ…」
 それでも動こうとしない美雪に、やにわに腰を上げ、佐渡先生は声を荒げました。
「ええい、聞き分けんか。アナライザー!」

「えっ、やだ…何すんの!」
 アナライザー、離してっ!!佐渡先生〜〜!!

 アナライザーにひょいと抱っこされ、暴れながらも持って行かれてしまう美雪。お父さんも、かつてアナ公に抱っこされてベッドへ放り込まれたことがありますねえ。だから、その娘を連れて行くのなんかは雑作も無いでしょう。救命艇はすぐ近くに停まっていたらしく、美雪はそのままハッチの中へぽいと乗せられてしまい。
「アナライザー!!」
「美雪サンハ、生キテクダサイ…」
 飛び起きて出ようとする美雪の眼前で、アナライザーがハッチを外からロックしてしまいます……


 心優しきアナライザーは、大好きな雪が消息不明と聞いて、ロボットながら悲しい思いをしていたのかもしれません…「美雪サンハ」と言った彼の台詞に、その思いが載せられていた、とERIは思いましたよ。




 さて…
 佐渡先生は、どうして死ぬと分かっているのに地球へ残ろうと思ったんでしょう。

 これはERIの勝手な推測ですが……


「復活篇へのプロローグ」でもでっち上げてみたんですが、『佐渡フィールドパーク』というのは一種の研究所だったのではないかと。主に、DNAで保存されていた動物の、再生復活事業を担っていた、のじゃないかな、なんて思っています。
 大体、2192年頃から始まった遊星爆弾での地表破壊、海水蒸発、土壌汚染。あれでほとんどの動植物は念入りに死滅してるはずなのに、翌年にはもうズォーダーをして「美しい星だ」と言わしめるほどの復活、って、……ありえないっしょ。ズォーダーが見ていた地球の自然、というのは、多分大半がレプリカで、ちゃんとはもとの自然は甦っていなかったんじゃないですかね。
 しかも、その後も侵略者が毎年のように来てたんですからね、あの5年間は。とどめが「3」での太陽の膨張です。地表はまたまた、海水が蒸発、人類絶滅の危機に晒されたわけですから。その翌年の、アクエリアスの接近では、地球全土が水没したわけじゃなかったみたいですからね。
 まあそれにしても、あの後やっと地球の自然はまともに復活し始めた、と考えた方が無理がない。しかもDNAから自然繁殖にこぎ着けるまでにはきっと並大抵でない時間と努力が必要とされたことでしょう。

 佐渡先生は、もともと獣医なんですよね。腕の善し悪しはマア、置いといて(爆)。獣医として、この17年間、動物の復活を一生懸命やってきた。なのに、おそらく今回、パーク内には残される動物もいたでしょう。人間を移住させるだけで、きっと手一杯です。復活させられた動物のほとんどが置いて行かれる運命であることは、この後に出てくる地球各地の自然の中に棲息する、様々な動物たちの姿からも分かります。のんびりと運命を受け入れているように見えますが、あれは「見捨てられた動物たち」なんですよ。
 カスケードブラックホールが発見され、移民計画が本格化して以来ずっと、「連れて行けない動物たちの世話をして、一体何になるのか」と、佐渡先生は周囲から言われ続けていたことでしょう。それでも、生命を管理するという仕事には、天変地異など関係ない…だから佐渡先生はこの仕事を辞めることはありませんでした。例え明日、大地が燃えて無くなってしまうとしても、この手で復活させ、育んだ命を見捨ててなんか行けますか。最後の瞬間までその世話をし続ける、それが万物の霊長としての人間に科せられた責任だと、先生は判断したのでしょう。

 ちっ、マジになっちゃったよ(涙目)。
 今回のヤマトの話は、極限状態での二者択一、という重いテーマも含んでいますからね…。初っ端から、ジャングル大帝っぽい画面がずっと気になっていたんですが、なるほどね、こういうことだったのか、とちょっと悔しくなりました。

「あなたは見捨てて行けますか」?
 隣人としての動物たち、地球に共に生きる人間以外の生命を?

 そういうことなんですね。



 実は試写会では、皆さんご存じの通り、この後「バッドエンド」と「トゥルーエンド」に分かれて2通りの上映があったわけです。

 佐渡先生と、真田さんは地球に覚悟の上で残ります。(真田さんの残った理由は、佐渡先生とはまた違うでしょう)共に生きるべき他の命、動物たちを見捨てて地球から退避した人類の、覚悟のようなものが、バッドエンドのほうでは強調されていました。
 実際に劇場で上映されたものはトゥルーエンドの方でしたけどね。試写会では、「地球が助かる方と、この地球滅亡の方と、どっちのシナリオがいいですか」っていうので多数決取ります、っていうんで赤いスカーフを振らされたんですが(w)、ERIは会場で「こっちの方がいい」と挙手した人間の一人です。
 このバッドエンドでは、美雪をヤマトに乗せ、古代たちは地球を離れます。ブラックホールは地球を飲み込み、跡形もなく消し去り。そして古代は涙を流しながら、第二の地球となるアマールへとヤマトを駆って出発する…そういう終り方でした。


 佐渡先生、真田さんの覚悟。
 運命を受け入れ、滅んで行った地球のその他の生命たち。


 ヤマトのその先の闘いは、それらを背負って、今度はアマールで待っている者たちのために…ということになるわけです。



 ERIの個人的な感想では、実を言うとこっちの方が「腑に落ちた」。こっちの方が、「一つ一つの決定を大事にして生きて行かねば」という気にさせられる。こっちだと、佐渡先生も真田さんも死んじゃいますが、見捨てて行った命の分まで丁寧に生きて行かなくちゃと、心底思わないといかん、そういう覚悟みたいなものが貫かれていて、そのシビアさがERIはいいと思ったんですよね…。
 そもそも移民計画に同調した時点で、「人間以外の生き物はほぼ見捨てて行く」と決定したようなもんですからね…。そうそう、だから、真田さんの苦悩はそこから始まっていたに違いなく。「見捨てて行く」のではなく、真田さんは「逃がす」ためにずっと移民計画を推進していたのでしょう。最後までここですべてを見守ることを前提に。



 暗くなったな。
 ……ではここで、明るいツッコミをひとつ。

 冥王星が先ほどBHに飲み込まれた!ってシーンがあったんですけど、次には「土星が飲み込まれた」って言うシーンがあるんです。



「だーかーら!なんで惑星直列なのさ!?」




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(14)
クライマックスへ…!>に続く