感想文(11)

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<帰って来い!!信濃…!>

 ああ、ヤなサブタイトルですな。<合掌!スターライト>でもいいぞ。……どっちにしろ止めて欲しかったわ。

 ERIだけでなく、他の皆さんも幾度となく公開前に言っていたことですが、「仲間の犠牲の上に辛くも得る勝利」的な展開はもうゴメンだよ、と。
 ゴルイさんの特攻も「なんだかなあ…」と思いましたが、この後超巨大な敵要塞を前に、アマールの英雄パスカル将軍、そしてヤマトからは大村さんが捨て駒に使われます。
「さらば」よりはマシ?そういう問題じゃないでしょ?


 ヤマトの眼前に全貌を現わすSUSの超巨大要塞……背後にはなぜか太陽のような恒星を背負っている…要塞の周囲には光り輝く流動体。古代くん、その威容を凝視。

 ……わからん!!

 真田さん、ああ見ただけでこれが何だか分かるのは、真田さんしかいないんだけどなあ……クッソー…!!
「…あのエネルギー流は何なのだ…!」
 真田さんの一番弟子、折原真帆ちゃんがECIへ移動し、分析を始めます。古代クンも必死に考えてはいますが、なにしろ今回は独力で切り抜けないとならないわけですから大変です…真田さんはいない、雪もいないし島もいない。アナライザーもいないんですよ。女神様もいないしね。

 一方、SUS要塞の動きに血の気が引いたのはパスカル将軍でしょう。 
 光り輝くエネルギー流をたたえた湖面に浮かび上がる、不気味な大要塞。その周囲に聳える5本の塔は、超巨大ハイパーニュートロンビーム砲の砲身なのです。その塔のような砲身が、おもむろに角度を変え…ヤマトにその筒先を向けます……
「いかん、…ヤマトを守れ……!!」
 アマール艦隊はヤマトを庇うように密集・先行し、パスカルのスターライトが防御シールドを張ります。と同時に放たれる、膨大なエネルギーの束………嗚呼。
 超絶な光芒を満身に受け、スターライトのシールドはついに破られてしまいます。燃え尽きるブリッジから届く、パスカルの最後の通信——
「…古代艦長…、後を…頼みましたぞ」
<パスカル将軍ーー
…!!>



 前にも書きましたが、パスカルさんってホント「漢」だったなあ、と思います…彼は知っていたんですよ、SUSのこの武器の威力を。ヤマトと古代、地球人の正義を信じて、身を盾にして彼らを守ったんです。

 出撃する以前から、パスカルはSUSの巨大要塞が領空に接近していたことを承知していたでしょう。戦艦だの艦載機だのが来ているんですから、親玉も上空に来ているというのは分かっていたはずです。しかも、自分のトコにあるのはヤマトに較べたら古典的な戦艦だけ。戦艦というには、あまりに優美な船……きっと、彼は宇宙戦争には最後まで加わりたくはなかったでしょう。
 SUSは同盟各国に艦隊を出すよう要求していたに違いありませんが、これまで彼はその要求を蹴って来た(いや、そこまでの科学力は実質なかったのかも)。おそらくこれが、最初で最後の出撃だったかもしれません……
 自艦のシールドは、SUSのハイパーニュートロンビーム砲を防ぐだけの耐性はない、とも薄々分かっていたかもしれません。特攻もいいですが、彼のように「力が及ばないことを承知で、ただ僚友を守るためにだけ散る」という姿は一番切ない。しかも、こういうのこそ、一番勇気が要ることじゃないでしょうか。

 

 ***



 SUS超巨大要塞内部では、SUSの皆さん(つか、ボスのバルスマンか)の卑劣さを表現するための演出が。ハイパーニュートロンビーム砲を発射するにあたって、フリーデとベルデルの援軍がヤマトを包囲しているんですが、それを撤退させずにバルスマンは砲を撃ってしまえと命令するんですよ。友軍も巻き添えにしてかまわん、と。
 まあ短い時間内で「こいつらは悪人」という印象を観客に印象付けるにはお決まりの演出です(完結編のディンギル星人のボス、ルガール大神官大総統もそうですが、味方を犠牲にするのも躊躇わない、という悪役の態度は、カンタンに勧善懲悪気分を観客に持たせますからね)。
 しかし、アマール艦隊が捨て身でヤマトを守った一部始終、そして友軍の艦隊を見殺しにしてもかまわんというSUSの態度を見たベルデル・フリーデは、残存艦隊を撤退させ、SUSを裏切って攻撃をやめてしまいます。SUS、案外その恐怖政治も脆いモノだったわけですな。

「見ろ!他の国の艦隊が引いて行くぞ…!!」
 ヤマトでは、その事実にびっくり。間隙を見逃さず、大村さんが古代に具申。
「これをチャンスと捕え一気に畳み掛けましょう!」
「よし…!全砲門発射用意…!!」
 
 ところが、要塞は孤立してもその武力は変わらず。再度放たれるハイパーニュートロンビーム砲……ヤバい、古代クン、ヤバいよ!!
「…!反転上昇!!」
 二度目の砲撃、ヤマトは古代の号令のもと間一髪弾道を逃れますが、反射的に逃げられなかった地球艦隊、その他の艦は哀れ犠牲に。

 ……ねえ、ちょっといいっすか?
「ハイパーニュートロンビーム砲」って書くの、疲れるんですけど(爆)。長い。しかもまた「ハイパー」ってところの発音が変。ディンギル星人の親戚??同じ発音なんだけど。省略してハニビ、じゃだめっすか?(殴★☆)


 もとい。ここでね、「古代、どうして他の艦にも回避命令を出さなかったんだ!」と憤慨してる声も聞かれました。地球艦隊の大半が壊滅したのを、古代の采配ミスだと言うわけです。まあ、そういう捕え方もあるでしょう…でも、だからこそERIは、後ろにいた地球艦隊の動作が遅かった理由を「無人艦だったから」にしたいと思った。艦隊司令として、自艦の危険回避と同時に僚艦へも同じ指示を出すべきだというのは当然でしょうが、古代くんだって万能じゃないでしょ。有人なら一つの艦に数百人が乗り込んでいるわけですから、簡単に切り捨てるわけにはいかない。でも、無人艦ならあきらめもつきます。古代クンが眉一つ動かさずに味方艦隊の壊滅を見ていられたのは、あの大半が無人の戦艦だったから……。
 そう思っては駄目でしょうか。


 間髪を入れず、主砲攻撃、ミサイル攻撃を続けるヤマト、しかしそのどちらもはね返されるだけです…

「畜生…!!主砲もミサイルも利かない!!」
 上条の悲痛な叫び。一体どうしたらいい?!
 古代艦長、敵要塞を凝視したまま作戦を変えます。
「上条、コスモパルサー隊を呼び戻せ。あのエネルギー弾に巻き込まれたら一巻の終わりだ」
<古代艦長!>
 ECIの真帆ちゃんから分析結果が。<あの砲身が、要塞のシールドの役目をしているんです。シールドを破らなければ、どんな攻撃も利きません!>
 万事休す、か…?!
 その時、静かな声が。
「…古代艦長、ちょっと信濃を借ります」
「大村さん…?」

 やおら副長席から立上がる大村さん……
「至近距離で波動ミサイルをお見舞いすれば、どうにかなるでしょう」
 艦底に格納された、新型ミサイル艦<信濃>。波動ミサイルを24基搭載した特別仕様の爆撃機——
「信濃。…しかし、あれはまだミサイルの発射実験が」
「だからこそ、若い者には無理。私がテストを兼ねてやってきます」
 誰もが、「えっ」と思っているうちに、大村さんはニッコリ笑って「では行ってきます」と第一艦橋を後にします。古代艦長も例外ではなく、半ば呆気にとられたまま、大村さんを見送る格好に。

 えっ、ちょっと、大村さん…!!



 試写会のときも話題に上りましたが、古代がどうしてここで黙って行かせたんだろう…?と思った人は多いかもしれません。
 まあ私も思ったよ…「え?え?黙ってお見送り?『逝って良し』てか?」と思わなかったわけではなかったす。でも、落ち着き払ってるのを見たら、古代ももしかしたらこの時点では「テストだって言ってるし、…戻って来るだろう」と思ってたんではないでしょうか……。それはあまりにも楽観的な希望的観測に過ぎないと、すぐに彼自身も分かったとは思いますが。

 援護射撃もままならない状態でした。
 主砲攻撃は撥ね返される。誤って信濃に当たれば大村さんも危ない。本当はこういう時こそ艦載機で援護するべきだろうと、コバは臍を噛んだと思いますが……もしかしたら大村さん自身がそれを拒絶したかもしれない。若い者が犠牲になることはない、と…

 集中砲火に晒される信濃。
 操縦席は早くも火の海…最初から特攻覚悟で引き止められるのを防ぐために「テストだ」と言った大村さん。

「…古代艦長、聞こえますか」
 飛ばされたヘルメット、無数の火花が散るパネルスクリーン……エマージジェンシーコールの響くブリッジ。座席に這い上がるように戻った大村の額からは、鮮血が流れ落ち…。その猛々しい顔を途切れ途切れの映像が捕えています——。
 片道切符は承知の上だ。
 見つけたぞ、あのシールドの盲点を……!

<……大村さん、…よく聴こえます>
 僅かな躊躇ののち、応える古代。
 
「どんなもんでも、弱点はあるもんですなあ」
 これから、それを潰しに行きます。
 …なんですか、そんな顔…せんでくださいよ…古代さん。



 …古代艦長。あなたと過ごした3年間…、最高の航海でした。
 聴こえるか…?お前ら若い奴らが、これからの地球を守るんだ。
 …任せたぞ…!!



 ヤマトの第一艦橋に響く、副長の声…成す術もなく見守る、クルーたち。
「独り身の俺に、怖いもんなんかないんだ」 
 地球をなめるなよ!!
 …宇宙戦艦ヤマトをなめるなよ……思い知らせてやる…!!

 信濃に積んだ24基のミサイルは、ばらばらに発射しては効果がない。弱点はあの砲身の最上部だ。一つでも潰せば、他の4つも無力化する…5つの塔からの雨霰のような爆撃をくぐり抜け、塔の最上部に突っ込む信濃——連鎖反応を起こし、崩壊するシールド。
 戦友の偉業に、思わず敬礼する古代。
 ——泣いてる場合じゃない。

「あの5本の塔を破壊するぞ!!」



 あーあ、ちょっと見ているのがイヤだったよ。テレサに特攻させて、ただ見ているだけだった時のことを、古代クン忘れちゃったんだろうか。
「血を流しても守らねばならないものがある!」…と言ったのは、こういうことだったんでしょうか、艦長。
 艦隊司令の心が折れてしまったらもうグダグダですからね…「大村さんーーー!!」って古代が泣かなかったことを、褒めてあげるくらいしか手はないですが……それにしてもね。

 責められるべきは脚本かもな。いや、原案……監督か。確かにね、ヤマトを次世代のファンに託してやろうという気持ちがないわけじゃなかったんでしょうがね。映画のパンフにも、若い世代よ、リアルヤマト世代の真似をするな、と無謀にも書いてくださいましたがね。あと、ヤマトの代わりに特攻するのが「信濃」だという、そのネ—ミングの必然性もようわからんかった。昔(第2次大戦時)の戦艦「信濃」に引っ掛けているのだとしても、なんかチガウ感じがしました…。



 この手の安直な特攻シーンには、やはり納得行きませんでしたっ、西崎監督っ!!



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(12)
あの太陽を撃て!>につづく