***********************************************
<フライバイからロングワープへ!>
前半の山場とも言えるこのシーン、復活後初めてヤマトが戦うことになります。いつどこから敵襲を受けるか分からない緊張の中、6000隻の移民船を引き連れ、3分隊の護衛艦隊162隻を率いての旅立ち。そしてついに地球から1万7千光年……一体どこのどの惑星国家が仕掛けた物か、広大なハニカム・サーチネットが発見されます……やはり、待ち伏せされていたということだろうか。しかし一体、誰が、何の目的で……?
一同は作戦室へ。
懐かしの床面パネルスクリーン。航路の説明はかつては「航海班の仕事」でした……スクリーンを操作する桜井君のコスチュームも緑色です(が、彼の所属は操縦班……で、真帆の補佐……)。
「このハニカム・サーチネットは約10万光年四方にも及んでいます」
「これに引っかかると、敵さんが出て来るって寸法か」
「ロングワープで迂回すればどうでしょう」
「ヤマトならともかく、移民船のエンジン出力ではそんな長距離ワープは不可能だ」
けんけんがくがくの皆さん。そこへ、第三艦橋ECIの真帆ちゃんがモニタ越しに参入。
<…方法がないわけではありません>
見てください……
彼女が表示したのは、船団付近に観測される中型ブラックホール、BH−199。<宇宙儀に投影します>
さて、ここが今回のCG作画でも秀逸なところ。手書きとCGの境目が微妙に分からない工夫のされた作画が今回のヤマトの売りですと、西崎Pも仰ってましたが、ここの背景の動画も素晴らしかった。
ブラックホール自体の「見た目」も想像でしかないですが、イメージとしてはナイアガラの滝のような巨大な浴槽の排水口…でしょうか(おい)。下に向かって落ちているというのは物語の進行を余計な科学考証に妨げられないための妥協…というのはわかります。時計回りに物が吸い込まれているのも、地球の北半球ならではの現象だとか、そんなんもあんましツッコンじゃダメ…(つか、ヤマトの宇宙空間では、みんな何か回って吸い込まれる時って時計回りだよね。ヤマト世界の宇宙には、『コリオリの力』が働いていて、宇宙儀上では舞台はいつも北半球に当たると……あ、そか、ここも前作へのオマージュか)←無理矢理
でもこのブラックホールの描写、視覚効果としてはとても分かり易かったです。ただしまじめに考え始めると駄目。……ヤマトの航海は、「朝びらき丸」(byナルニア物語)の航海に近い物があるんで……(w)。
ああうう、元に戻ろう。科学考証はしちゃ駄目。妙にリアルな画面だし、シナリオのそこここにもっともらしい科学考証がついてくるもんだから、ついそれをしそうになるけど、いかんいかん(w)。
とにかく真帆が言うには。
<BH−199は太陽の質量の300倍はある大物ですから、吸い込む力がすごい。これに引っ張られれば加速がつきます。外周のフライバイからワープへ入れば、移民船のエンジンでもロングワープが可能です>
コバが突っ込みます…「無茶だ!」
「失敗したらどうなると思ってるんだ」と上条も。
<…フライバイに失敗すれば、事象の水平線を超えてブラックホールへ吸い込まれる…>
航法の桜井はちょっとノリ気ですが、コバと上条はタッグを組んでなぜか全否定。こいつら、全編で意気投合してたの、こことラストシーンだけでは…(w)。
「宇宙ってのはどこまでも繋がっているんだ。気がついた時にはブラックホールに吸い込まれてる。事象の水平線がここまで、なんて看板立ってるわけじゃないんだぞ、商船学校!」
……商船学校、って…。航法理論だけで操舵を考えるな、頭でっかちめ!って言いたいのか…
(ここだけの話、ERIはコバって人を名前で呼ばない奴なのかもしれない、と密かに思いました……。アダ名でね。島次郎のことは「エリート」、上条のことはコッソリ「負け犬」、桜井はぶっちゃけ「商船学校」。副長は「キューカンチョー」、中西は「ハラヘッタ」艦長は…「オッサン」…?大昔、島は沖田さんを「年寄り」って言ってましたが…爆。)
…アンタ、…太陽にほえろ!の七曲がり署出身か(爆)
艦長の古代、若手のやり取りを聞きつつ、副長の大村さんに「どう思う?」と目線を投げます。
「…しかし、他に手はありません」と副長。
「怖がっていては、何事も前進しない…ということか」
艦長、その一言はコバには利きました。それを聞いたコバ、黙っちゃいましたからね。怖がるだ!?誰に向かってそんなこと言ってやがる、俺様を誰だと思ってるんだ!と一瞬で血液が沸騰(w)、…したかしないかはご想像にお任せします(w)。でもね、フライバイをやるのは移民船なんだよ……?みんなそれを忘れてやしないか…??
「よし、フライバイを決行する!真帆、航路の計算を!桜井、全艦隊に作戦を徹底させてくれ!」
艦長命令一下、総員が作戦に入ります——。
ここで使われていたのは、完結編の音楽…<驚異のニュートリノビーム>でした。だけど、復活篇のサントラ聞いてるうちに、定着しました。
真帆ちゃん、フライバイワープを提案したのはいいけど冷や汗だくだくです。真帆の航路指示が移民船の命運を左右するわけですから…
「……99宇宙ノットを維持。…そう、慎重に……」
烈しい気流の中、一列縦隊を組んでBHー199へ接近する移民船団。速度は120宇宙ノットへ上昇。緊迫する各船内の艦橋、恐怖に耐える船内の市民たち。
白状しますと、この映画の中でERIが一番「怖い」と感じたのがこのシーンです。市民たちが乗っているのは驚異的な船体強度を誇るヤマトではありません。おそらく居住性第一に作られたであろう外壁装甲…座席から直に、外が見えるんですよ?!?窓の厚さが2メートルあるからと言われても、イヤです、めっちゃ乗りたくないです……宇宙塵がドカンとぶつかって来るんですよ、稲妻光ってるんですよ〜〜〜?
で、よくもまあ、ヤマト艦長の決定にすべての移民船・護衛艦が意見の具申もせずに直ぐに従ったなあ、と。そっちにも無茶苦茶感心しました。それほどまでに、古代とヤマトのコンビ復活はすごいことだったのだろうか。時間的にそれほど逼迫していたのか…と言うのもあるかもしれませんが、私はこの時代の情報操作のすごさとか、古代自身のカリスマ性とかに驚愕しましたね。繰り返し書きますが、ここまでに第一次・第二次合わせて多分6億人が死んでるプロジェクトですよ…???フツー続行しないよね?(それともやっぱり、全滅の報は一般市民には伏せられていたのか???)
いずれにせよ賞賛すべきは、ヤマトほどの強度も操作性も持たないあの移民船を操縦し続けた、何百名もの無名のパイロットたち、ではないでしょうか……。お世辞にも乱気流の中でスムーズな動きが出来るとは思えない形状、とにかく巨大であること。それらを押して、6300隻の移民船がグループごとにブラックホールの外縁に接近……そして、見事第一グループがロングワープ突入に成功します。彼ら無名の操縦士たちにブラボー!!と言いたい。
——が。
その様子を伺っている目がありました。
星間連合軍、エトスの艦隊。…ゴルイ提督(CV:伊武さん)。
「……なんと大胆不敵なワープだ」
感心してる場合じゃないっすよ!攻撃命令が出てますからね!と副官に言われ、ゴルイはメインスクリーンに映る次の巨大船のグループに目を遣り…。
「目標はあの巨大船だ」
全艦、攻撃開始せよ!
ヤマトでも敵艦隊の出現を捕捉。
4時23分の方向に敵艦隊が現れました!距離2.8宇宙キロ!
「護衛艦隊、船団の後部へ回れ!移民船団のワープを援護しろ」
古代の号令一下、180度回頭する護衛艦。移民船を先に行かせ、右後背からの攻撃に全艦隊が向かいます。移民船の窓からその光景を見たら、さぞかし心強かったでしょう。
呼ばれたように、さらに別の敵が出現。3時30分、1時20分の方向からも敵艦隊です!
やはり複数の国家が移住を妨げているのか…!?
「護衛艦隊に告ぐ!二手に分かれ、右舷の艦隊は右の敵に、左舷の艦隊は左方向の敵に当たれ。中央の敵はヤマトが引き受ける!」
いやーー、ERIは古代くんに惚れてはいませんけどね、どうよこのセリフ!!そんじょそこらのヒーローには言えないセリフだよね!!一言で言ってただただ「カッコイイ!!」
出来るか出来ないかではなく、単純にカッコいい!ヤマト艦長になったら一度は言ってみたいセリフかも!
(でも、そこまで言い切って……多勢に無勢って言葉もあるよね……。アリの大軍は象をも倒す、って言うよね…言い切っていいのか!?とも同時に思ったけど、…ここで古代を疑っちゃイカーーーン!という気持ちで押し切りました)笑。
ちなみに、島が艦長だったらこのセリフ、言うかな。………確実にその能力がヤマトにある、って分かっていたら言うかもしれません。でも、…島だったらまず計算させる。敵艦隊がどっち方向にどれくらい、だから右舷にどのくらいで左舷にどのくらいの配備をするかを命令。その判断に要する時間は、ものの十秒で事足ります。そして主力護衛艦数隻がヤマトのあとに続け!中央の敵に当たるぞ!って。…どうすか?航海班の皆さん?
「上条、ヤマトの戦法は任せたぞ」
艦長に一任され、戦闘指揮に入る上条くん。(でね、ERIとしてはここがね、今回古代クンが成長したなあと思った最初の瞬間でした。中央の敵はヤマトが引き受ける!と言っておいて、でも自分が出しゃばるわけじゃない。実は、艦長自ら戦闘指揮するかな、と思ったんですよ。それを、班長に任せたからね。上条、リベンジして来い、っていう思い遣りもあっただろうしね…)
しかもこの後がまたすごいです。
「小林、お前はコスモパルサー隊の指揮を執れ。戦力は一機でも多い方がいいだろう。俺が代わりに入る」と艦長服を脱ぎ捨ててまで操縦を買って出る。お前には艦載機の方が性に合っているだろ?と。
へへ、有り難え!
ぴょこんと立ち上がるコバのケツをひと叩き、「行け!」と。
ここで、コバはまた余計なことをやらかしますが…(無線を中西から横取りし、「真帆!!外から護ってやるからな!」ニヒヒ!って……。呆れ返る中西クン。全艦放送だったようです…。コバ……あんた、何考えてんの…?)——というか、このエピソード、入れ込む必然性があんまし良く解らんかった(w)。古代がコバを艦載機チームの指揮へと出した理由の伏線が省かれていたし(それがパンフにもあった、加藤の制服をコバに託したというエピソードだったのかもしれないですが…。とある情報筋によれば、絵コンテシナリオの時点で、もうそのエピソードは無かったようなんです)
さて、コバの言動もさることながら、古代くんです。
そもそも、『ヤマトの戦闘機動が出来るのは島だけ』という目でこの映画を見始めた(特に)私ら緑矢印にとっては、驚愕の連続。
「おいおいおいおいムリだろ」と思わず操縦席の古代に突っ込む始末。「やめて、古代くんに出来るわけ無いっしょ」……もう、冒頭でブルーノア@丸焦げをものすごい技術で操艦したことなんかすっかり忘れてしまってます(ゴメン、古代)。試写会では心なしか、周囲でも「ザワッ」としたような気がします…(アンタの周りだけだって?)
ああ、まったくここは、古代とコバの「想定外」の行動の2本立てで、忙しいったら無かった(爆)。
古代はすっぽり操縦席に収まったようですが、この後コスモパルサーの艦載機戦へと突入します。コバ、目立つ目立つ。
かつての数倍かと思われる広大な格納庫(……そのおかげか、ヤマトは横幅がドーンと広がって、正面から見ると怒ったフグのよう…orz)、
コスモパルサーもゼロも翼は折りたたみ式。そこはかなり情状酌量されたようです。前項でも引き合いに出した、元ネタの戦艦大和のスペックですが…あれによれば元々積めた搭載航空機はたった7機ですからね?折りたたみにでもせにゃ不可能だよ、と以前から分かっていたことですが、それでもアレは広すぎないか???
……魔法で拡げてあるんだよ(byハリポタ)。
格納庫で、同じく出撃する美晴姐さんに「小林ィ、聞いたよ?すごい告白〜」と言われ、不敵にも言い返すコバ。「告白じゃねーよ♪」
けど、チョーーーッと待て。美晴姐さん、アンタどこへ行く?案の定、整備士に呼び止められてるじゃないすか…
「先生、どこへ行くんすか!」
「おだまり!」あたしはこれがやりたくてヤマトに乗ったんだ。
艦内で負傷者が出たらどうするんですよ?
「そんなのあんたが応急処置しておきな」
…ってそんな。
しかもコバには
「ヘタレこいたらあたしがお仕置きに撃ち落とすよ!」って。
「美晴ぅ、お前に撃ち落されるなら本望よ!」
……こっちもこれだよ…。
コバ、一体このちゃらんぽらんな台詞はどっから出て来るんだ…?しかもこの後、美晴を褒めるついでに「帰還したら抱きしめてやる」って…(バカ、とか言い返されてるが、この二人の関係がもうちょっと描かれたら良かったのにと思ったのは私だけじゃあるまい)。本命はダ〜レだ?ってクイズ出してるわけ?なめんなよ……(ムキになるERI)←実はかなり気になってる
ともかく、コスモパルサー、全機出撃!
***********************************
<智将・ゴルイ提督> へつづく