『SPACE BATTLESHIP ヤマト』感想文
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(1)ここが良かった!!
「日本映画でよくぞここまでやってくれた!」
「よくぞあそこまで実写として見るに耐え得るものを作ってくれた!」
……というのがゴールであるなら、SBヤマトは120点満点です。
迫力のVFX、原作を丁寧に踏襲した登場人物たち、原作ファンをも唸らせるオマージュ的仕掛け、名台詞、名シーンの見事な取り合せ!!
加えて現代的感覚にシフトした新しい「ヤマト」ならではの科学表現!
宮川さんのあの曲も使ってくれたし、あの「無限に広がる大宇宙…」のナレーションも、原作のままです。オープニングで鳥肌立ったファンも多かったのでは?
キムタクの古代は奇麗だしカッコイイし、緒形直人の島も島らしかったし、原作の島以上に熱くてステキだった。次郎が息子でもまったくOK。
メイサの雪は強くて可愛いし、髪の色は違うけどもPart1のツンデレ松本美女な雪ちゃんに近いのかな、と何度か見て思い至りました。古代との心のふれあいとその変化、ラブシーン、最後の別れ、古代が呟くラストの言葉「…ユキ!」もERIはOKです。
特に池内博之の斉藤はこの映画一番のヒット。ギバちゃんの真田さんも、声色や抑揚まで似ていたし(w)、山崎さんの沖田艦長は原作を見ていないなんてのが信じられないくらい、沖田艦長でした。
西田さん、高島さん、ミーくんも、「よくまあここまで」と思いました。
アナライザーもビックリしたけど、まあアリですよ。最後、AIユニットだけ拾って帰ってやれば良かったのに、とは思ったけど(w)。
個人的に、橋爪さんの藤堂長官がツボでした。「今はそんな時期じゃないんだ!」と記者を一喝する最初の方の演説が、軍最高責任者ではなくて政治家答弁みたいだったけど、キました!
さらに、イイ演技…と言えば、南部役の矢柴くん。彼は声が(w・いや、声だけとは言わんが)カッコよくて、ことに後半、特撮相手にやってるとは思えないほどの(w)迫真の演技でした(w)。
ひねりの利いた脚本も斬新でした。
沖田さんの広げた大風呂敷『イスカンダルなんかない、放射能除去装置もない、でも希望を持って人類が死ぬために、ヤマトを飛ばそう』が面白い。
科学考証など、設定の改良も。
艦内に重力があるんだかないんだか分からなかったいい加減なヤマトに、ちゃんと「下部重力ジェネレータ」を設置してくれた。艦内は、0.9Gだそうです。横ロールでガミラス艦載機をかわすシーン、嬉しそうな沖田さんと島のリレーションには思わずニヤリとしました。
島が操縦を古代に渡す時、艦がグラっと揺れる描写はことにお気に入り。29万6千光年の旅をほぼ終えてもなお、古代に操縦が渡る瞬間には艦全体がぐらつくのにまたニヤリ。
古代の、波動砲発射シークエンスに、原作では省かれていた「姿勢制御、固定」ってのがあったのも非常にナイス。(w)。
古代と島、この2人の関係も、気持ちよく描いてくれてました。
古代が初めて波動砲を使う時、「マニュアルは読んであるな」と真田に言われて準備し始めますが、それを心配そうに見守る島が(w)微笑ましい。「異星人の武器なんて初めてですから上手く行くかどうかは分かりませんよ」と言った古代に「失敗したら死ぬだけだ」と言い放つ沖田さん。おいおい古代クン、島はその「異星人の船」をすでに上手く動かしてるぞ、と思い、またもやニヤリ。原作Part1でも、古代は最初のうちは島に水をあけられてるんですな。そこを上手い事表現してました。
雪を助けに行った古代を待つ間の、ガミラス艦載機を避けるときの島のロール機動、それを受けて真っ直ぐ着艦口へ飛び込む古代機。互いに互いがどう動くか、その呼吸を知っている同志、という2人の信頼関係も再現してくれてました。短時間で艦長の呼吸と島・古代の呼吸が合って行くのは、原作そのままですね。
また、決戦前の、檄を飛ばした古代が「地球で待つ家族のために!闘って、生きて帰ろう」と“島を見て”言ったシーン。島の、あの奇跡の操縦の腕で、ガミラスへ突入する古代機を援護しに現れるヤマト。
最後に、パルスガンで気絶させた雪を島に託す時、島が戻って来ると分かっている古代。古代に別れの言葉ではなく、「いい船だ、無駄にするな」と未来を託した島。
何にも増して、今まで「ヤマト」に興味のなかった人たちまで「観に行こう」と言う気にさせた、木村拓哉という役者がすごい。それを支えた豪華俳優陣、そして山崎監督のVFXもね。
純粋に、この映画。「楽しんだ方がいい」です。ケチ付けようと思ったら、そりゃあ際限なくケチが付く。でも、そこを敢えて吹っ飛ばして、マア楽しんで下さい、と未見の方にはお勧めしときます(w)。
(2)ここがヤだった!およびツッコミ色々
しかし、ケチと言うより……こんな欠点もあるから、覚悟してネン♪という点を以下にまとめときます、しかも例によって航海班贔屓な視点。まあ、くだらないアゲアシ取りだと思って下さい(w)。
● 地下都市の描写が「どっかで見た」感じだった。(「ブレード・ランナー」とか。リドリー・スコットもの。山崎監督は「エイリアン」のファンなのらしい。オマージュなんだろうと言ってしまえばそれで終わるが)
● 地下都市の上に上がると、そこは九州の坊ガ崎沖。瓦礫のヤマトのすぐ近くに落ちるイスカンダルロケット、その上空に戻って来る沖田艦「えいゆう」。防衛軍本部も九州なのかな…あの世界の地球が狭い、と感じたのはそのせいか。
● ヤマトの発進、簡単過ぎる……あれどうにかして。見た目補助エンジンがあるのに(補助エンジンはスターターで、メインエンジンに接続して波動エンジン始動というプロセスのはずなんですけど)…フライホイール接続も始動の秒読みも点火もなんもなく、いきなり緒形直人の気合いで発進。
「こら!!」とツッコんだ……映像がすごいだけに、コケました。
● ワープも!島の「ワープします!」の一言だけでワープなんて…(泣)しかも、ワープ中に食事も出来る、ナニも出来る。快適過ぎる……
● 14万8千光年がズッコけるほど「近かった」。
● 波動砲をしょっぱなから使うのはまあいい……けど、真田さんが戻って来なかったためなのか、発射孔を何ヶ月も塞がれっぱなし、お土産のように地球までお持ち帰りしたガミラス製波動砲のフタ。危機感ゼロな皆さん。それが自爆という選択を古代にさせるわけですが…土壇場で南部にあんな怒るくらいなら、もっと早くにどうにかしとけ、艦長代理・w。
● 戦闘中、第一艦橋で人物を追っている時間ばかりが長い。外で何が起きているのか分からなくて、気が逸れた。それは多分に(予算不足と)あの500メートル級のヤマトの内部をちょびっとしか映していないからでもありましょう。あのヤマトは、アニメ以上に狭かった(アニメでは第一艦橋が広過ぎ・w。しかしこっちは、どこもかしこも狭い、250メートル級の海自護衛艦より狭い・爆)。 売れてない映画だけど、ジェームズ・キャメロン監督の「アビス」という作品では、建設途上で放置された原子炉の炉心の中に何万tもの水を張って、その中で深海シーンの撮影をしたと言う。ヤマトは予算がなかったと再三言い訳されているが、それにしてもカーフェリーの内部丸出しで撮影…というのは見ていて困っちゃった。
● ガミラスが「意識集合体」だという設定は、ヤマトにしてはSFっぽくて目新しいんだけど、だったら地球の戦艦に合わせた武器なんぞ学習して作らんと、どうせ火星まで来てるんだからとっとと地球へ侵入して地球人の意識をみんな乗っ取ってしまえばいいのでは?と突っ込みそうになった。(爆)「ヤマトが地球へ帰還した時すでに地球人類はガミラスにすり替わっていた」とかだったら泣くけどね。
● 実体化した「デスラー」が、昔のアメリカ映画のCG みたいだった…(「ターミネータ−2」のT-2000とか、「アビス」の意志を持った水とか…それにしても、ハリウッド映画の方が完成度はずっと高い…)。
● ガミラスが、地球侵攻に使っている兵力が「二足歩行、四足歩行の学習するエイリアン」。ガミラス側の戦艦やミサイルがカッコいい、と思ったら、マクロスFに出て来る知能の高いエイリアン「バジュラ」に似てた。知能は高いらしいが心はなく、その生態というか振る舞い方は、あのシャゲーーー!!ってヨダレ垂らしている「エイリアン」さんにソックリ。天井を目まぐるしく這い回る動きはまさにソレ!しかもウルトラマンの怪獣みたいにビーム砲を吐く。なので、後半のヤマ場が「エイリアンvsヤマト」になっちゃってた。
● ガミラスの内部の洞窟のセットも、スタジオ丸出しな感じでした。ちょろっと歩いて行ける距離に、イスカンダルとガミラスの中枢部があるのもかなりヘン(w)。地球やヤマトだけじゃなく、ここも世界が狭い……
●「イスカンダル」を見つけに行ったはずの真田さん……なぜあんな強力な爆弾を持ってたの??イスカンダルを爆破するつもりだったのか??(「さらば」の真田さんは、最初から白色彗星帝国の動力炉を破壊する、という目的で帝国内部に入ったので爆弾持ってて当然。でも、こっちの真田さんはあんなすごい威力の爆弾を持ってくる必然性がないのだ…)
● 主砲が、自衛隊の護衛艦の高射砲と同じ動きしてました。ぎゅいーがしゃん、どん。
● 沖田さんが世話をしてた観葉植物が、行きも帰りもほぼずっと同じ大きさ(枝葉が伸びてない)でした…
● 古代のパルスガンの「1・2・3」表示がカッコ悪かった〜〜〜…ウルトラ警備隊の持ってる銃みたいだった……(斉藤の事件が伏線なのは分かるけど、それがまるまる「伏線」と分かる稚拙な描写がウルトラマンレベルなのだ。実を言うと、艦載機チームも「あ……スーパーガッツ(←ウルトラマンダイナ)」と思ってしまうとそのまま思考がそこから離れなくなるので要注意・w)
一番イヤだったのは、(w)ヤマトを宣伝するためにTBSがジャンジャンやっていた「イロモノ/キムタク特番」の類。イタイです……ピン子の「森雪の親戚の林霰」とか…池内博之、緒形直人までイロモノ系の番組に出てましたからね……orz ああいうの見てると、ヤマトのリアルタイムからのファンです、なんて言いたくなくなるんだよ……(ボソ)
ERIは今回のこの映画、否定しません。が、ヤマトなのに「してやられた!!」と思えなかった、という点で、この映画に星を付けろと言われたら…3つ、かな(w)。
★ 付け加えておくと、「ノベライズ版」SBヤマトは一見の価値有りです。予算の都合や映画の尺のせいで削られた部分、説明不足なところ、叙情的なシーンがちゃんと補われています。発進シークエンスもワープの秒読みも、原作からの名台詞も映画以上に盛り込まれてるので(映画の方が良かったシーンも多々あるけども・w)例えば「ターゲティングって何?」などと思った人はノベライズで補完できます、お勧めです。
ことに「島父子」については納得の行くように描かれていますよ。
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