Consider (5) 復活篇での島次郎

復活篇公開直前、島次郎に関する超ヲタな考察です。

本編のネタバレは含みません。だって、次郎のことしか書いてないもーん(w)。

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<はじめに>

 島くんを愛する航海班の皆様。気がつきましたか?
 試写会のパンフレットの裏(及び,その他の公式資料のうちの幾つか)に記載されている、キャストの順番。古代進、真田志郎、その次が島次郎、…なんですよ。
 一番最初に、この事実にちょっと涙しました。宇宙戦艦ヤマトに於いて、「島」の名はやはりそのポジションなんだ、と…改めて感無量になっちゃった。次郎の名がその場所にあるのは、とりもなおさず「兄貴のおかげ」です。制作者サイドにとっても「島」の弟だからこそ次郎をそこに据えた、という想いがある、と分かる。次郎としては兄の七光りで癪だろうけれども、そこは謙虚に認めなさい、と言いたいぞ(w)。



<2220年の地球連邦について>

 さて、次郎について書く前に…復活篇の世界、A.D.2220年頃の、地球連邦の国家的背景をちょいと考察してみました。

 新作「宇宙戦艦ヤマト/復活篇」では、「地球防衛軍」の影がとても薄いんです。ほら、藤堂平九郎長官やかつては守兄などのいた作戦司令本部は、一体どこへ行っちゃったんでしょうか?
 古代がエトス星のゴルイ提督に所属を名乗るシーンで「地球防衛軍所属、宇宙戦艦ヤマト艦長古代進」と言っていたので、防衛軍自体は存在するのでしょう。各船団についている護衛艦の所属も当然地球防衛軍なのでしょうが、今回は総司令本部やその長官らしき存在はまったく前面に出て来ません。
 替わってヤマトと逐一連絡を取る地球の窓口は、「科学連邦宇宙局」。かつての「科学局」の発展した姿なのでしょうか。
 実は、オフィシャルでもこの省庁の名称はコロコロ変わるんですよ…。(宇宙科学局、だったりただの科学局だったり、科学連邦宇宙局だったり。復活篇の試写会のパンフレット一つとっても2ヶ所に別の名称が…)どうも釈然としないんですが、要は長官が真田さん、の「科学」してるトコ、のことです。
 さて、手元の少ない資料(宇宙戦艦ヤマト画報P.161/竹書房発行)によれば、「地球連邦大統領」の下に「連邦議会」があって、その下に並列の関係で「医学研究所」「科学局」「宇宙開発局」「防衛軍」「連邦行政府」「自治州政府機構」がある、という設定。これはちなみに、「ヤマト2」の地球連邦組織図、2201年の世界であります。
 その設定で行くと、もともと科学局長官である真田さんは、ヤマトに乗り組みながらも実は「防衛軍統合参謀本部長/藤堂平九郎氏」と同等の権力者だった、ということになります。…すげえ(何を今さら)。まあ、組織の大きさから言うと科学局よりも防衛軍の方が圧倒的に上なので、実質「同じ」ってことはないでしょうが、それにしてもとっとと単身軍艦に乗ってどんどん外宇宙へ行っちゃう真田長官…そんなトップを持った科学局は、気が気じゃないよね。
 …というのは横っちょに置いとくとして。
 今回、防衛軍総司令本部よりも前面に出ていたのが、その真田さんを長官に頂く「科学局」だというのは事実。まあ確かに、もとから「地球防衛軍」と「連邦政府」は、でかい本部施設と下部組織を持ちながら、毎度地球の危機については有害かつ無力、という醜態を晒し続けていました。なので、復活篇に於ける「久方ぶりの地球的規模での危機的状況」においてリーダーシップを取ったのが科学局だったとしても、なんら不思議ではありません。…それが民主的方法によるものだったのかどうか…は判然としませんが。でも、復活篇を見ている限り、かつての藤堂さんのポジションを真田さんが担っている…という印象は非常に強い。

 参考までに…「宇宙戦艦ヤマト3」2203年(ヤマトの世界では、この2203年というのは通常概念の12ヶ月ではありません…w)では、上記の各省庁に加え、「太陽エネルギー省」「宇宙開拓省」というのが増設され、宇宙開拓省下に「宇宙移民本部」というのが出来ました(「3」12話)。その当時の移民本部長は、なんと藤堂平九郎氏(防衛軍長官と兼任)。連邦議会、の下につく並列関係の各省庁にあまり変化がないとしたら、いくら真田さんの息がかかっていたとしても次郎が移民船団本部長…というのはちょいと出世し過ぎのような気もしなくはありませんね。



<移民船団本部長・島次郎>

 でもまあ、十数年経っていることだし「移民本部長」と「移民船団本部長」とは名前が似ていても次元が違うんだ、と勝手に解釈しましょう。そも、「3」の移民本部は大統領命令で急遽無理矢理作られたものらしいので、だから防衛軍統合作戦本部総司令が兼任、なんて無茶苦茶な事態になっていただけでしょう。
 さてそこで、なんで次郎が14年経つと「移民船団本部」の偉い人になってるか…という話です。

 次郎は復活篇の劇中、パッと見は真田さんの補佐、という役割のように思えます。ですが彼らが居る場所は「科学局(長官・真田)」。なのに、次郎の役職は「移民船団本部長(所属としては宇宙開拓省内の移民本部)」。でも……科学局と宇宙開拓省とは別の省庁です。だから、科学局の真田さんの補佐を移民本部所属の次郎がするのはやはりどうも妙なのですが…この際そのあたりのキモチのワルさは無視しないと話が進みません。2215年以前に、また何か組織図に変更があったのか、もしくはイレギュラー人事、そう思うしかありません。
 ERIは、真田さんが別の省庁に勤務していた次郎を、科学局にヘッドハントしたんだ、と思うことにしました。まあとにかく、何でもやり放題、なのが真田長官ですからね(w)。ERIの脳内では、完結編直後から「兄貴の後を継いでパイロットになる」ことを放棄した次郎。そしてどうやら、少なくとも本編でも、彼は「防衛軍」には入ってなかったようです。
 復活篇を見ていましたら、次郎がやっている仕事は専ら「解析」。劇中、古代にカスケードブラックホールについて説明する真田さんの台詞の中で、「移動性ブラックホールの観測/進路の予測計算/対処法の研究(近隣惑星のテラフォーミングによる一時避難など)」を彼が担っていたという内容の言葉を聞くことが出来ます。背景も,次郎と真田が連邦議会(?)にその研究結果を報告し、対策が立てられてきたことを表す場面でした。
 さて、ということは。
 どうやら次郎は、連邦大学あたりで宇宙物理学かなんかを専攻し、宇宙開拓省の移民本部に勤めていた若手官僚だった…と考えて良いようです。
 その根拠は…またもや「ヤマト3」を引き合いに出しますが、地球連邦大学宇宙物理学部長サイモン教授、って人が太陽の膨張と地球の危機を予見し、大統領と議会に観測結果を提出した…というエピソードがあったことを皆さん覚えておいでだと思います。サイモン教授が関係するかどうかは判りませんが、「地球の滅亡の危機に際して移民を提唱した」学者、ということで教授の残した業績は評価されているはず。サイモン教授と次郎に接点があるとは考えにくいですが、「移民」を共通のカードとして、連邦大学宇宙物理学部と次郎、に何らかのつながりがあったと考えるのは不自然ではありません。

 ただねえ、どう見ても、あくまでも真田さんの補佐、というのが今回の彼の役回りにしか見えないんですよね…。「移民船団本部長」という肩書きの次郎ではありますが、本部長らしき言動や、本部長として何か・誰かを指揮している姿は皆無だったんですよ…(苦笑)。例えば古代に対しても、移民船団本部長であるならば移民船団の護衛艦艦長よりも役職は上であるはずなんですが、そんな素振りはまったくないし(w)、ヤマト機関長の徳川太助には「島」と呼び捨てにされている。
 でも、おそらく大勢いるであろう科学局の天才たちを差し置いて、真田さんの補佐が務まるんですから、次郎もまんざらじゃありませんよね。さすがは大介の弟!!(ありゃ?ここでも次郎は兄貴の七光りから逃れられない運命なのかしら)
 でね、ここでERIは次郎をただの宇宙物理学出身の良く出来た若手官僚、とは思ってません。もちろん、私の妄想に過ぎないのですが、彼はそこにプラスアルファを持っていたんじゃないかと。テラフォーミングにしても移民にしても、宇宙物理学に加え生物学や地球工学の専門的知識が必要です。移民、というからには地球環境を100%捨てて行くわけではなく、当然「環境そのもの」も携えて行く必要があります。動植物の種の保存、も必要不可欠なわけです。グローバルな視点で「地球をよそへ移す」事を考えられる人材が必要であり、次郎が大学で研究してきたのはまさにそれだったと、そんな風に考えてます。だからこそ、真田さんが彼を補佐にとヘッドハントした、と。(まあ,その辺は勝手にそのうちオリストにでもしてやろう…むふふ)



<次郎の17年間>

 さて今回、ERIが一番気になっていたのは…次郎が兄貴を失ってから過ごして来た17年間、についてです。
 復活篇を見た限りでは、彼はとっても純粋に,真っ直ぐに成長してくれていました。27歳のくせにどう見ても22歳の兄貴より「見た目も声も若い」のが解せませんが、素直な性格はそのまま、であったようです。

 2203年(完結編)の春、ヤマトは月のほど近くに残されたアクエリアスの海(氷球)に沈み、兄貴・大介の亡骸もそこで眠りにつきました。
 復活篇では(これに言及する人はあんまりいないのだろうと思いますが…)地上から肉眼で見える位置に、その氷の海が毎夜輝いて見えるようになります。月の右側に、いつでも…それがある、という設定なのです。
 …これ、完結編で戦死したヤマトクルーの家族にとってはめちゃくちゃ辛い光景ではないか、と思いませんか。どんなに忘れ難い人であっても、毎晩のようにお墓を見なくちゃならないとしたら、精神衛生上どうでしょう…?
 大介が戦死した当時、10歳だった次郎。小学5年生ならかなりの分別はつくでしょうが、それだけに逆に…残酷です。どうしてあの場所に行って、兄ちゃんを連れて帰れないのか、と考えたこともあるでしょう。防衛軍にそれが出来ないわけはなんなのか、と父親に詰め寄ったりしたかもしれません。いずれにせよ、次郎の人生設計に、あの宇宙に浮かぶ氷の海がつねに影響していたんじゃないかと考えるのは容易です。
 結果的に。アクエリアスに対する興味が、次郎を宇宙物理学や地球工学、スーパーバイオテクノロジーに向かわせたんではないか…、とERIは思います…。



<2217年>

 そしていよいよ、移動性ブラックホールが観測された年です。真田さんが見つけたらしいのですが、それが避けられないものであることも同時に判明したようですね。その年、同時にヤマトの再建計画にも着手されているからです。
 観測結果から移民計画の発動は,本当に短時間で行われたようです。察するに、「移民計画」自体は、それよりも以前から存在したと考えておかしくありません。幾度も滅亡の危機に晒された地球ですからね。ことに2203年以降は、「ヤマトのない地球」です。ここで再び滅亡の危機に見舞われたら、一巻の終わり…対策自体は幾ら立てておいても損はありません。
 アクエリアス沈静後は、まずは資源輸送に始まる復興事業、地球環境の再生、そして地球の護衛たる防衛軍艦艇の再建、が急務だったでしょう。同時に研究されていたのがおそらく、「地球環境の保存と移民」だったのでは。

 2215年頃には開拓省の官僚だった次郎は真田にヘッドハントされ、科学局に籍を置く宇宙開拓省の出先機関(?)移民計画本部代表に抜擢されます。実質真田の部下として、計画の根幹に関わることになるわけです。
 そこでおそらく彼が最初に直面したのは、アクエリアスの氷塊(…本編のデザインが。…なんであの形?w球体じゃないの?…YOUTUBEにUPされている復活篇メイキング映像では、デザイナーが「アクエリアスの氷球」と言っていますが…あれ、球じゃないよね…島だよね・w
)の地下に眠る、半壊状態の「ヤマト」のサルベージ。地下10キロの地点にあるヤマトの周囲にはドックが建設され、凍結していた船体が露になる。その作業に次郎が直接関わることはないでしょうが、移民計画とヤマト再建計画の中心メンバーだった彼は逐一報告を受けていたことでしょう。

 極秘の計画です。おそらく両親にも話すことは出来ない。泣き言を聞いてくれる人がいたとしても、それはおそらく真田さんだけです。
 そして当然のこととして…沖田十三、兄島大介の遺体も、船体の解凍と共に発見されたことでしょう。次郎は、兄貴の遺体と対面したでしょうか。ついにその時を迎えて、嬉しかったでしょうか…それとも、苦しんだでしょうか。両親に、兄を会わせてやりたいと、思わなかったでしょうか…。もちろん、それは遺体の保存状態にもよるでしょう。沖田さんは、完結編によれば比較的奇麗なまま艦長席で発見されるかもしれませんが、船体中央から爆発したヤマトです……もしかしたら、その他の船体内部に安置されていた遺体については、身元の判る形で発見されることはなかったかもしれません…。
 いずれにせよ、復活篇では屈託のない笑顔を見せてくれた次郎ですが、彼の過ごして来た17年間はある意味,非常に厳しい年月だったのではないか…とERIは思いました。

 ひとつ「救いになるかもしれない」事実を付け加えておきましょう。劇中、徳川太助が次郎を「島」と呼び捨てにするシーンがあります(真田さんは「島くん」と「くん」付けで呼んでいます)。月面基地司令に昇進していた徳川太助が、案外次郎の身近にいた良き兄貴分だったのではないか…という印象を受けました。だとすれば、真田さんだけでなく徳川太助も、次郎の頼もしい相談相手になってくれていたのではないでしょうか…。

 

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 さて,こんなところが「島次郎」に関する復活篇での考察、です。終始、屈託なく自信に満ちた表情でいてくれた次郎。2つのエンディングのうち、地球が救われていれば、彼の敬愛する上司、真田さんも無事です。次郎に取っての目下の気がかりは、再び地球市民をアマールの衛星から母なる地球へ帰さなくてはならない、ということでしょう。移民計画は,まだ終っていないのですから。
 そして、その傍ら。行方不明になった第一次船団の責任者、兄の想い人だった古代の奥さん、雪の消息を追うことも。そのために僕に出来ることは、なんだろう?彼はきっと、それも考えているに違いない。次郎は復活篇が一応の完了を見ても、休むことはできません。第一部「完」なんて画面には出てましたが、次郎の任務はまだまだ、銀幕の向こうで続いているのです。

 

                                 <2009.12.01>



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