Original Tales 「鎮魂歌」(解説)

 

 

 本編で、島が泣いてるのはたった一度だけだ、と記憶しています。
「さらば」で、古代が一人残り、ヤマトを特攻させるのを見守るシーン。
 島が人前で涙を”流してる”のは、あのワンシーンだけなんです。

 涙を浮かべてるのは何度かあるけれど(Part1の10話とか…地球の家族と交信した直後、通信室で涙見せてます)男泣きに泣かされているのはあれだけ、だったと思うんだ…。
 強がり、意地っ張りの島くんです。絶対人前じゃ、泣かないんだよ……。
 その分,別のオリストでは泣かしてあげましたが(w)…。

 島も男です。虚勢はって、ナンボです。

 その代わり、ここでは古代くん・相原くんに泣いてもらいました。でも泣かない島の方が、なんだかずっと痛いよ…(><)。ちょっと後悔したりして…。



<ヤマトは負けた?>
 実質、そう言うことになるのですが…。そんで、テレサも「勝って還るより負けて還る方が勇気がいることなのだ」と言ってましたが。
 でも、島は…テレサの行為も加藤や斎藤のしたことも、「同様の価値がある」と言いたかったのです。ヤマトは勝ったんだよ、古代。テレサの犠牲も、加藤や山本、斎藤たちの犠牲と何ら変わらない。古代にとっては、島がそう言ってくれたことが、唯一そして最大の救いになっただろうと思います。
 戦争で勝つことに価値?
 所詮野蛮人の殺し合い、命の価値を知らないにも程がある。そう言ってしまえばミもフタもない。参加したらそれは命の無駄使い、それは究極の真実ですが…。で、テレサはおそらく、本編でも、また「碧」や「奇跡」で描いた通り、戦いそのものを厭うているし、誰かを守るために誰かを殺さなくてはならなかったその行為そのものを呪うでしょう。だから、「ヤマトは勝った、彼女も自分たちと共に戦ってくれた」という、島や古代のこの感じ方は、誤解と言えば誤解なんです。


 
 
<——島とテレサの間に、気持ちのズレがある。>

 というわけで、これ、私はどうしても解消できませんでした。

 ……テレサの願いの本質は「自分が殺されたとしても、戦いたくない、殺したくない」だったはず。なのに、結果としては正反対のことをしちゃったわけです。それを島や古代たちが自分らに都合のいいように取ると、このオリストみたいなことになる。けど、もしもテレサが助かっていたら、あの時島と引き換えに自分が殺めた彗星帝国の人々を思い、気も狂わんばかりに苦しむことでしょう。

 ……つか、原作本編でも、なんだかんだ言って、結局戦いたくないと言っていたテレサが一人で特攻するシナリオで終わる。それは明らかに、ただ古代たちを生かし続けるためです。


 「2」26、最終話での古代と雪は、涙こそ見せてるけれど妙に清々しい顔をしてますよね?それで、古代にこう言わせる…「ありがとう、テレサ。奇跡は2度と起こらない、僕たちは、それを知っています」と。過ちは繰り返しません、と。
 テレサも仲間になって戦った、それで地球が救われた。それが本編の終り方なんです。
 これ、テレサ視点で考えたら、なんて矛盾に満ちた、切なくて哀しい結末なんだろう、って分かります…けど、大方はそう考えない。テレサが死んでいるだろうに、自分たちが生き延びたことを狂喜する、事情を知らないクルーたちと、視聴者は同じでなくてはならないわけ。そうでないと、…テレサひとりを犠牲にして続編を作る(観る)そのことに、視聴者までが良心の呵責を感じてしまうからです。



「2」本編はあんな終り方を余儀なくされた。古代は敗残の将としての自責の念も見せず、テレサの死を勝利にすげ替えて「過ちは繰り返しません」と清々しく言い、あれは宇宙の女神の愛だった、と訳の分からないロマンを漂わせてうやむやにしました。
沢田研二の「ヤマトより愛を込めて」は、「2」のラストで流せば間違いなく、テレサへのレクイエムです。それも、島だけのために散った彼女の命への、鎮魂歌。

 でもやはり、独り生き残った島の心情としては「ヤマトはテレサの助けを得て勝利した」と、そう思わなくては辛すぎる。

 自分だけを助けるため?だったら、他のみんなが死んで行った意味は?となるよね。彼にしてみれば、自分だけを助けたテレサを逆恨みすることすら、できないんですから。もしも本当に、テレサが自分だけのために死んで行ったってことが事実と証明されてしまったら彼はこの先、ヤマトの戦士として戦い続けることなどできなくなっちゃうでしょう。

 彼女はもうこの世にいない。だから、真相は分からない。それでも、生き残っている島が救いを得たいと考えるのは、仕方の無いことなのかもしれません…


<「生きて、還れ」>
 このセリフは、本編にはありません。
 テレサも言ってない。まったくオリジナルです。でも、メッセージとしては正しい方向なんだと思うぞ。
「生きろ」というメッセージを、古代もテレサから受け取った。生きたかった命への鎮魂歌は、今生きている者が生き続けること。甘くて哀しい言葉より、ダイレクトに魂に突刺さる感じが欲しかった。抉ってでも連れて行く、生き延びる方向へ。それが、テレサの愛なんです。


<入院期間>
 本編では、ガトランティス戦から一ヶ月後、になってますが、んなバカな。いくらなんでも早過ぎるんで、時間経過はもうちょっと取ってあります。本編の放映に合わせて、ストーリー中の日付も変更されているでしょ…(「2」なんて、第1話から発進までの間が現実には1ヶ月弱あるんだけど、本編ではそんなに経ってないっての)まあ、まともに考えると可笑しくなるんで、帰還は単に本放送に合わせて4月7日か8日にしました。

 でもそうすると、退院は…夏頃、て感じ?(「新た」の冒頭の季節感、だとするとなんかちょっと違う…。だって7月31日なんだもん)雪の服装はともかく、あの上着。いくらハイテク素材(なんか涼しい細工がされてるらしい)だって言っても、長袖の重ね着はねーだろ(w)。外で酒盛りできる位、なのでまあ、夏なのかな…って気はしますが。

 それから、書き忘れていましたが、「新た」本編では真田さんも島や相原と一緒に退院しています。でもさ…真田さんがギリギリまで入院、じゃヤマト拙いじゃん。(てERIは真剣に心配になった。)山崎さんが面倒見てくれていた、って言ってたけど、ええと…山崎さん、どこにいたんだろ……。「1」から「2」から、ずっと見て探そうかと思ってるけど、どうなん?見つかるじゃろか?「新た」でガミラス艦内にいるヘルマイヤーとか、そういうのより見つけにくい気がする…。なので、真田さんは二人より早く、退院した…っていう運びになってます(w)。その他にも合わせたい辻褄があるので、そのためにも(爆)。

 時系列に関しては、ホントヤマトはいい加減(爆)。 

「永遠に」も夏なんだよね。時系列では「新た」より数ヶ月後、って設定なのに(w)。アカン、まともに考えたらあかん。なので、ERIのオリストもあちこちおかしいの。駄目。突っ込んじゃイヤ(w)。

 

<小道具>

 南部ちゃんちからお見舞にコーヒーサイフォンもらった島(w)。案外、アナログな道具とか、チマチマいじるの好きそうかもしんない、と思って。飽きるのも早い?(w)

 あのコーヒーサイフォンって、理科の実験みたいで、その上ゆーっくりとしかコーヒーいれられない。時間を湯水のように使う贅沢、ってやつでしょうか。しかも病室は火気厳禁なのに(w)アルコールランプ使ってるんだろうか。病院だからメチルならその辺にいっぱいあるもんな(そーゆー問題か?)。

 最後、一人にしてもらった島。でも、古代のためにコーヒー、いれたんでしょうよ?それとも、飲んでから出て来たかな?古代?妙にそんなことが気になる私でございました。

 

 蛇足。描写が妙にリアルでイヤだって人もいるかナ?溲瓶とか、導尿とか(w)。だってさあ、しょうがないじゃん(「碧」で、テレサが導尿をどうしていたか、って部分は完璧に割愛したんだ。この程度は勘弁してもらいましょう)。



 とにかく、島には格好良くしてて欲しい。そんで、それと同じくらい、古代を慰めてあげたかった。そんな願いを込めて描きました。

 私も、結構頑張ったかも。

 

 

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